遺産分割協議に際しての注意点

 人が亡くなると相続が発生します。人が亡くなるという事は、とても大きな出来事です。残された家族にはとても大きなショックと共にやらなくてはいけないことが次から次へと発生します。皆さんに最も身近なのは【相続税】ではないでしょうか。こちらは10か月以内やらなければいけない事は、御存じの方も多いと思います。ではその他の手続きはどうでしょうか。

私の専門分野である登記が発生するのは亡くなった方が不動産をお持ちの場合です。不動産は日本において重要財産ですので、確実な手続きが必要です。相続人が複数いる場合には【遺産分割協議】を行うことになります。遺産分割協議の効果は相続開始の時に遡って効果を生じます。この遺産分割協議を行う場合の注意点はどういったことになるのでしょう。

・相続人全員で行う事(相続分の譲渡を受けたものは参加可)

 →遺産分割協議書には協議者【全員】の押印が必要

 →戸籍をすべて収集し相続人が確定した後に行う

・遺産分割協議書には実印で押印し、印鑑証明書を準備する事

→法的には実印押印は要件ではありませんが、実務上諸機関へ手続きを行うために実印押印は必須。

・各種手続きに耐えうるよう必要事項を記載する事

 →財産は特定できる程度詳細を記載する必要あり

・借金等のマイナス財産の取り扱い

相続が発生した場合、借金も相続の対象となります。遺産分割協議において借金を誰が負担するというような事を決めることが可能です。この時、債務を承継した相続人に債務返済の能力がなければ、債権者にとって不利益となります。このような考え方から、借金についての協議結果は、相続人間では有効な協議となりますが、債権者は変わらず法定相続分に応じた債務を請求をすることも可能です。借金を完全に相続しないためには相続放棄が必要です。

・遺産分割する意思能力が必要

認知症の場合、遺産分割協議を行う事はできません。この場合、後見制度を利用する事になりますが、後見人は被後見人の財産を確保するという考え方に基づくため、他の相続人の考えるような遺産分割協議は難しい可能性が高いと予想されます。


各自の事情により、遺産分割協議の内容やその進め方も変わってくるので、まずは現状を整理の上、各種手続きを進めて頂ければと思います。


記載日:2023/02/13