相続による不動産名義変更の具体的流れ


全体像を把握する事は、手続き開始の第一歩です。

人が亡くなると相続が発生します。不動産、預貯金等など手続きを要する財産は広範囲に及ぶ場合もあります。具体的な事例から相続開始後の不動産手続き(戸籍の収集、遺産分割協議書、登記の申請)に関して確認してみましょう。

何をすればよいのかイメージできるだけでも不安は和らぐかと思います。

●登記簿の確認~具体的な流れ

不動産の相続登記(名義変更)までの代表的な流れを確認したいと思います。

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甲区1番   所有権移転 平成24年1月4日 受付番号第22番 平成24日売買  所有者A

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乙区1番 抵当権設定 平成24日 受付番号第23番 平成24年1月4日金銭消費貸借同日設定 抵当権者D銀行株式会社  債務者A 債権額4000万円

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先ずは、登記簿を読み解き状況を理解しましょう。平成24年1月4日にAはこの不動産を購入しました。その際AはD銀行株式会社から融資を受け、同日D銀行株式会社から抵当権の設定を受けています。受付番号が連続していることからも所有権移転と抵当権設定を平成24年当時、連続して登記申請したことが読み取れます。

その後、上記の不動産を所有していたAが亡くなり、相続人がAの子、B及びCで有る事を前提とします。

①遺言書の有無を確認

自筆証書遺言、公正証書遺言が代表例です。遺言がある場合には以下に記載した内容と手続きや必要書類が異なります。下記は遺言書が無い事を前提の手続きとしてご確認ください。

②相続人を確定させる

以下の書類を収集し調査します。

・Aの生まれてから亡くなるまでの戸籍全て/ Aの住民票除票(本籍記載)

・B及びCの戸籍(A死亡後に取得したもの)

・B及びCの住民票(マイナンバーの記載なし)

※戸籍は転籍や結婚等で編製されます。第三相続人(兄弟姉妹)が相続する場合は被相続人の一生分の戸籍の他、被相続人の両親の戸籍全ても必要となります。

抵当権が団体信用保険等で抹消可能かを確認します

団体信用保険とは住宅ローンを銀行等から借りる際、債務者に万一のことがあった際、保険金で債務額全額を返済する制度です。また団体信用保険に入っていなくても、そもそも債務全額が弁済されていれば抵当権の抹消は当然可能です。この場合、抵当権抹消の書類は既に金融機関から発行されている事が想定され、また完済からかなりの時間を要している事も考えられるため、抵当権抹消登記の申請はそういったことを加味した申請書を作成する事になります。

遺産分割協議を行

合意内容を遺産分割協議書として作成します。

実務的には遺産分割協議書は実印で押印し、諸手続きには印鑑証明書を添付することになります。不動産を特定する必要があります。不動産を特定するためには以下の内容を記載します。

土地:所在・地番・地目・地積

建物:所在・家屋番号・種類・構造・床面積

ちなみに預貯金の相続に関して遺産分割協議書に記載する場合には以下のように記載します。

X銀行株式会社 Y支店 普通預金 口座番号123456 はBが相続する

金額を記載する必要は必ずしもありませんが、複数人で相続する場合には誰がいくら相続するか記載します。遺産分割協議書が数葉に及ぶ場合、割印をします。製本テープを使う場合、テープと紙面にまたがるよう押印をします。

法定相続情報証明の作成を検討する

②に基づき法定相続情報証明を作成します。

法定相続情報証明は、相続登記に必要とする書類相当を法務局に提出します。その際、相続関係を図に示したもの(家系図的なもの)を合させて提出します。その内容を登記官が認証し、提出した図に認証文付して交付します。

法定相続情報証明を作成することで、戸籍の束を各機関に提出する必要がなくなり並行して銀行、法務局他、各機関に手続きを進めることが出来ます。

⑥登記を申請する

➃に基づき所有権移転登記を行います。③で抵当権が抹消可能であれば所有権移転と合わせて抵当権抹消登記を申請します。登記は概ね2~3週間ほどで完了します。相続人に対しては登記識別情報通知書(権利証)が発行されます。将来的に不動産を売却する際などに必要となる書類ですので大切に保存してください。

不動産の名義変更に限らず、預貯金の権利承継など相続関係を証明する戸籍の収集に時間がかかります。令和6年4月1日から相続登記が義務化されます。相続発生から3年以内に相続登記をする必要があります。また相続税の申告も必要となります。

最後に

相続は誰にでも必ず発生する避けては通れない出来事です。手続きも広範囲に及びます。一人ひとり状況は微妙に異なります。相続に影響を与える諸制度(廃除・欠格・相続放棄・養子縁組等)についての理解も必要です。専門家の力を借りて手続きを行うのも選択肢の一つです。ご相談をお待ちしています。


記載日:2023/7/6